『合理的配慮とICFの活用-インクルーシブ教育への射程』(西村修一著)

本を読みました。

『合理的配慮とICFの活用-インクルーシブ教育への射程』(西村修一著)

初版が2014年7月です。なんでこの本を見落としていたのだろうと思いました。

著者は「合理的配慮は、障害のある子どもが障害のない子どもとともに学ぶためのキーポイント、教育の重要な柱になります」と述べています。その上で、個別に特設する特別な支援を、合理的配慮とは明確に区別して考えています。このように、合理的配慮やインクルーシブ教育の捉え方が実に適切な良書です。

ICFについてはなんとなく理解したつもりになっていましたが、こんなに具体的に現場に役立つ可能性を秘めたものとは知りませんでした。本当に勉強不足でした。ICF-CYというものの存在もこの本で初めて知りました。これは、ICFの「Children & Youth version」小児青少年版です。

著者の西村氏はこのICF-CYをもとにして、さらに実際の教育現場にマッチしたチェックリストを作り、その具体的な使い方を紹介しています。著者は10年以上も前にこんな仕事をしていた・・・尊敬してしまいます。このチェックリストを用いて検討していけば、必要事項の漏れ落ちもなく、支援者の思い込みや主観に流されにくい、個別の教育支援計画や個別の指導計画が作れそうです。

この本の内容で印象的だったのは、「主観的障害」とか「主体・主観」とかの概念です。これは、わたしや同僚の先生方が聴覚障害児の教育を考える中で「自己認識」という概念で考え続けてきたことと重なります。当事者が自らの「障害」といわれている状況をどうのように捉えているのかという問題です。そして、この問題はICFモデルの「心身機能・身体構造」と「個人因子」の関係というよりも、「活動」と「参加」を焦点とした、「環境因子」と「個人因子」の相互作用にかかっています。著者は「主体・主観」概念について次のように述べています。

「それは、主体的に活動し参加する自己としての子どもの有様・生きる姿を捉え、その対応を図る糸口を考えさせるからです。何らかの心因的な問題を有し、マイナス感情を強く抱いている子どもへの対処です。マイナス感情を除去し、子どもがプラス感情を抱いて主体的に生きていくための周囲のかかわりや手立て・環境を用意していかなければなりません。」

リタイヤする前に読んでおきたかった本でした。
本当に迂闊でした。

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